軌道パッドの抜け出し対策

1.はじめに

 スラブ軌道では、軌道パッドや可変パッド等のレール締結装置(以下、締結装置)の構成部材が抜け出す事象が発生し、軌道の維持管理上の課題となっています。こうした現象は、伸縮継目近傍や長大橋梁等のレール可動区間で発生しやすく、レールのふく進に伴って軌道パッドや可変パッドが移動してしまうことが原因と推定されます。そのため、既往の対策では、軌道パッドのレール方向両端にU型のズレ防止用の突起を設け、タイプレートとの定着性を向上させる形状変更等が行われています。しかし、依然として抜け出しが生じており、その要因としてレールと軌道パッド間の接触状態が影響していると考えられます。具体的には、レール底面の腐食による表面粗さの増加や、軌道パッドがレールの腐食生成物と固着することで、レールと軌道パッド間の摩擦力が増加することが要因として挙げられます。

 一方、可変パッドについては、軌道パッドおよびタイプレート上面の受圧面に加え、レール長手方向座面の外周部に膨らみ(リブ)を有する形状で使用されます。リブはタイプレートおよび軌道パッドとの定着性に寄与していますが、長期の使用によってリブに損傷や欠損が生じてしまう場合があります。そのため、軌道パッドおよび可変パッドの抜け出し現象には、レール底面と軌道パッドの間の相互作用以外にも、可変パッドのリブの健全性や可変パッド樹脂の耐久性が影響しているものと考えられます。

2.軌道パッド抜け出し防止対策工の開発

2.1 対策工の概要

 軌道パッドおよび可変パッドの抜け出しを防止するには、レールふく進時の過度な摩擦力を抑制することが有効と考えられます。そこで、レールと軌道パッドの間で安定した摩擦状態を確保するため、レールと軌道パッドの間に摺動シートを挿入する軌道パッド抜け出し防止対策工を開発しました。図1に、直結8mm形締結装置を例とした摺動シート導入時の各締結装置構成部材の位置関係を示します。摺動シートには、自己潤滑性を有し、耐摩擦摩耗特性に優れる特殊ポリエチレン樹脂を用いています。摺動シートの導入によって、レールのふく進時にはレールが摺動シートと共に軌道パッド上を摺動し、レールの移動の摩擦力が軌道パッド下の締結部材に過度に伝達するのを防止することが可能となります。

 図2に、摺動シートの外観を示します。摺動シートは長さ300mm×幅140mm×厚さ1mmで、締結装置導入時のレールの高低調整量への影響を小さくしています。

なお、施行時のズレ防止等を目的にレール底面側に厚さ0.8mmのマグネットシート層を積層したタイプや、巡視点検時の視認性向上を目的に側面に突起を設ける等の形状変更についても検討しています。

  • 図1 摺動シート導入時の締結装置部材の位置関係
    図1 摺動シート導入時の締結装置部材の位置関係
  • 図2 摺動シートの外観
    図2 摺動シートの外観

2.2 抜け出し防止効果の検証

 摺動シートの導入による軌道パッドの抜け出し防止効果を検証するため、直結8形締結装置を用いて繰り返し摺動試験を実施しました。図3に試験状況を示します。試験では、油圧アクチュエータによってレールを長手方向に振幅12mmで2000回往復変位させた時の軌道パッド、可変パッド、摺動シートの各挙動を評価しました。

 図4に、試験結果の一例として、鋼板付軌道パッドに対して摺動シート未導入時の軌道パッドの変位履歴と、EB(超硬質ゴム)材付軌道パッドに対して摺動シート導入時の軌道パッドの変位履歴を比較した結果を示します。摺動シート未導入時では、試験初期にはレールが軌道パッド上面を摺動していたのに対し、繰り返し数78回目で鋼板付軌道パッドがレールと共に動き出すことを確認しました。これは、繰り返し数の増加に伴ってタイプレート端部と接する可変パッドリブ部が損傷し、可変パッドがレールと共にタイプレート上を滑り始めたためです。一方、摺動シート導入時には、摺動シートは終始レールと共に軌道パッド上面を繰り返し摺動し、試験終了後も軌道パッド、可変パッドの損傷や移動は認められませんでした。これらの結果は、摺動シートによって、軌道パッド下の締結部材に伝わる過度なレールの摩擦力が抑制されたことを示しています。なお、本試験では、鋼板付軌道パッドに摺動シートを導入した場合でも、摺動シートはレールと共に試験終了まで軌道パッド上面を摺動し、軌道パッドの移動が防止できたことを確認しています。

  • 図3 繰り返し摺動試験の実施状況
    図3 繰り返し摺動試験の実施状況
  • 図4 軌道パッドの変位履歴
    図4 軌道パッドの変位履歴

3.終わりに

 本稿では、直結系軌道締結装置を対象とした軌道パッドの抜け出し防止対策の取り組みについて紹介しました。本対策工は、厚さが1mmと薄い樹脂製の摺動シートを既設の締結装置内に挿入することで軌道パッドの抜け出しを防止できる手法です。別途実施した100万回の2軸斜角載荷疲労試験では摺動シート自体に損傷は発生せず、高い耐久性を有していることを確認しています。今後は、営業線での適用を目指し、実軌道での効果や課題について検証していきたいと考えています。

参考文献

1) 佐藤大悟、鈴木実、玉川新悟、杉野満、弟子丸将、野口雅人:直結8形レール締結装置軌道パッドの抜け出し防止対策工の開発、鉄道工学シンポジウム論文集第21号、pp.29-36、2017

(記事:材料技術研究部 防振材料研究室  佐藤 大悟)

耐震補強が困難な構造物に対する制震設計法

1.はじめに

 河川橋脚(図1)や店舗利用高架橋等では、周辺環境の制約によりRC巻立て等の一般的な耐震補強の実施が困難な場合があります。こうした条件下においても、ダンパー等の制震装置を用いることで部分的な設置工事のみで大幅な耐震性の向上が可能な場合があります。しかし、これまで構造物に制震装置を適用するための設計法は整備されておらず、個別に多数の詳細な動的解析を実施する必要がありました。そこで本稿では、構造物を所定の損傷以下に留めるために必要なダンパーの特性を、設計で得られる基本特性のみを用いて簡易に算定する設計線図、およびこれを用いた制震設計法を紹介します。

  • 図1 河川橋脚を対象としたダンパー補強のイメージ
    図1 河川橋脚を対象としたダンパー補強のイメージ

2.制震装置の概要

 ダンパーには様々な種類の装置が開発・実用化されていますが、現状で鉄道橋に利用可能もしくは実績がある制震装置を調査した結果、流体抵抗やすべり摩擦挙動を利用した、図2のような摩擦型履歴を有する装置の適用例が多い傾向がありました。この装置では、図2の摩擦力Ffが主な設計パラメータとなります。地震時には、構造物本体の振動エネルギーの一部をダンパーが吸収して構造物の応答を低減する機能を有し、その低減度は摩擦力と変位応答により囲まれる領域(エネルギー)の面積が大きいほど大きくなります。ただし、摩擦力を大きく取り過ぎると固定条件、小さく取り過ぎると可動条件に近くなり、いずれも図2の領域が減少して十分にエネルギーを吸収できなくなることから、構造物に許容される損傷(最大応答塑性率)を制約条件として、摩擦力Ffを適切に設定する必要があります。この摩擦力の設計のためには、通常多数の詳細な動的解析を実施する必要があります。

  • 図2 摩擦型履歴特性
    図2 摩擦型履歴特性

3.制震装置の設計手法

 以上を踏まえ、図2の摩擦型ダンパーを使用する場合に摩擦力Ffを簡易に設計可能な設計線図を提案しました。対象構造物としては、図1の固定~可動橋脚の可動側にダンパーを設置することを想定し、鉄道構造物等設計標準・同解説(耐震設計)において所要降伏震度スペクトルを作成する際の1自由度モデルにダンパーの特性を組み込んだ図3でモデル化しました。ダンパー特性は図2により与えました。設計条件は、構造物応答に影響を与える等価固有周期、地盤条件、降伏震度、地震動最大加速度(図3)を考慮します。これらをパラメータとして図3のモデルの動的解析を多数実施し、固定側橋脚において要求される損傷(最大応答塑性率)を実現するための摩擦力を算定して整理しました。

 図4には一例として、橋脚の最大応答塑性率の目標値を1.0、地盤・地震動の条件をL2地震動スペクトルII(G3地盤)とした場合の設計線図を示します。図の縦軸はダンパーの設計摩擦力を構造物の降伏荷重で正規化した荷重比γで正規化しています。また、構造物の損傷は構造物の降伏強度と地震動の大きさの相対的な大小関係で決まることから、地表面地震動の最大加速度(=amax)に対する構造物の降伏加速度(=降伏震度Khy×重力加速度g)の比である耐力比βごとに結果を整理しています。

 本設計線図の利用例として、例えば構造物の等価固有周期が1.0秒、降伏震度が0.59の場合、L2地震動スペクトルII(G3地盤)の最大加速度(=872gal)からβ=1.5となります。この条件を図4から読み取ると、γ=0.5、すなわち構造物の降伏荷重の0.5倍をダンパー摩擦力Ffとして与えれば構造物の応答塑性率を1.0以下にすることができます。このように、設計線図を用いることで、設計で得られる基本条件のみから構造物を所定の損傷程度以下に留めるために必要なダンパーの特性を簡易に決定できます。

  • 図3 設計線図のフローおよび構造モデル
    図3 設計線図のフローおよび構造モデル
  • 図4 ダンパー設計線図の例
    図4 ダンパー設計線図の例

4.適用例

 提案した設計法の適用例として、図5のような固定~可動構造を対象に、設計線図を用いて摩擦ダンパーの設計を行い、制震効果を動的解析により検証しました。固定支承橋脚のプッシュ・オーバー解析により降伏震度(Khy=0.23)と等価固有周期(Ts=1.43s)を算定し、あわせて地盤応答解析により地表面最大加速度(amax=360gal)を算定しました。これらより耐力比β=1.6となり、図4から対応するダンパー荷重比γ=0.4と得られました。この荷重比に対応するダンパー摩擦力(Ff=775kN)を与えた動的解析を行った結果、図6のように固定側橋脚基部のモーメント~曲率応答(損傷)が、無対策の場合と比較して大幅な低減できることが確認できました。

  • 図5 実橋梁の動的解析モデル
    図5 実橋梁の動的解析モデル
  • 図6 動的解析による固定側橋脚の基部モーメント~曲率応答比較
    図6 動的解析による固定側橋脚の基部モーメント~曲率応答比較

5.おわりに

 本稿の設計線図をはじめ、制震補強が基礎の損傷に与える影響や取付部の照査法、設計計算例など、設計上のポイントをまとめた設計手引きを作成しております。また、免震支承と制震ダンパーの併用など、より複雑な構造を対象とした免制震設計の支援も行っています。今後、この手引き等を活用し、従来の手法では補強が困難な箇所に対して、制震ダンパーの適用拡大を図りたいと考えています。

(記事:鉄道地震工学研究センター 地震応答制御研究室  豊岡 亮洋)

あと施工アンカー工法の設計・施工の手引きの改訂

1.はじめに

 あと施工アンカーは、コンクリート構造物の補強や改築、付属物の取り付けなどに広く利用されている技術です。近年、道路トンネルにおいて天井板崩落事故が発生するなど、あと施工アンカーに対する信頼性が社会的な問題となっています。また、鉄道構造物における技術指針としては、「あと施工アンカー工法設計施工の手引き(昭和62年9月)」(以下、現行手引き)が発刊されていますが、刊行から30年が経過しています。

 本研究では、載荷実験やFEM解析を実施し、あと施工アンカー工法の設計法を提案するとともに、「あと施工アンカー工法の設計・施工の手引き」(以下、改訂手引き)として、現行手引きの改訂版を取りまとめました。

2.引抜き耐力算定式の検討

 現行手引きにおいて、接着系アンカーの引抜き耐力式は、図1に示すようにコーン破壊耐力と付着破壊耐力の累加式で示されています。載荷実験およびFEM解析により、現行手引きの算定式の精度を確認し、それを基に部分安全係数を導入した限界状態設計法に基づく引抜き耐力算定式(1)を提案しました。また、安全係数として長期荷重の影響に関する係数を導入することで、下束などの長期的に持続荷重が掛かる部位へ適用するあと施工アンカーへの影響を陽な形で設計に取り込むことを可能としました。


  • 図1 接着系アンカーの引抜きに対する耐荷機構
    図1 接着系アンカーの引抜きに対する耐荷機構

3.適用条件に応じた設計法

 現行手引きにおいて、あと施工アンカーの設計は、許容応力度法の設計体系に基づき、適用部位に関わらず、材料のばらつき、算定式の信頼度、耐久性など、様々な不確定要因を包含した一律の安全率を用いています。一方で、設計における性能規定化を踏まえ、あと施工アンカーにおいても破壊に関する限界状態に応じた設計法に改訂することが求められています。そこで、適用部位や荷重条件、さらには構造物の重要度に応じた設計区分を設定し、設計区分ごとに各種安全係数の組み合わせを用いる設計法を提案しました。

4.狭隘箇所での設計法

 あと施工アンカーは、落橋防止装置等の狭隘箇所に用いる場合が多く、アンカー間隔が近接する場合やコンクリート縁端部とのへりあき寸法が小さい場合には、引抜き耐力が低下します。

 現行手引きでは、あと施工アンカーのコーン破壊面の有効投影面積による低減法を用いていましたが、より安全に精度よく評価する方法として、図2に示すように隣接するあと施工アンカーのアンカー間隔をパラメータとした載荷実験およびFEM解析を実施し、図3に示すアンカー間隔とアンカー筋径をパラメータとした引抜き耐力の低減法を提案しました。

 また、コンクリート縁端部とのへりあき寸法の影響を受ける場合についても、同様に載荷実験およびFEM解析を実施し、へりあき寸法とアンカー筋径をパラメータとした引抜き耐力の低減法を提案しました。

  • 図2 アンカー間隔の影響による破壊形態
    図2 アンカー間隔の影響による破壊形態
  • 図3 アンカー間隔の影響による引抜き耐力の低減
    図3 アンカー間隔の影響による引抜き耐力の低減

5.おわりに

 本研究では、載荷実験およびFEM解析を実施し、耐荷機構に基づく耐力算定式を検討するとともに、狭隘箇所への施工などを想定した設計法を提案しました。また、部分安全係数を導入した限界状態設計法による設計体系を提案し、図4に示す構成で改訂手引きを取りまとめました。改訂手引きでは、あと施工アンカー工法の施工時の留意点および施工後の品質確認試験の方法など、施工管理上の留意点についても取りまとめました。

 改訂手引きを用いることで、あと施工アンカーの安全性が向上するともに、合理化を図ることが可能となります。

 改訂手引きが、あと施工アンカー工法の実務に活用され、あと施工アンカーを用いた構造物の信頼性向上に寄与できれば幸いです。

  • 図4 改訂手引きの目次
    図4 改訂手引きの目次

(記事:構造物技術研究部 コンクリート構造研究室  角野 拓真)

レール継目部におけるラダーマクラギの動的応答に関する基礎検討

1.はじめに

 バラスト軌道は道床バラストのつき固めを基本とする定期的な保守を前提とした軌道ですが、特にレール継目部、踏切部、橋台背面などは保守頻度が増加する傾向にあります。ラダーマクラギはバラスト軌道の保守省力化を第一の目的として開発されたまくらぎであり、前述の多頻度保守箇所にも適用事例があります1)。本研究では、ラダーマクラギの保守省力化効果の定量化に関する基礎検討として、レール継目部に敷設されたラダーマクラギの動的応答(動的鉛直変位)を定量的に評価したので報告します。

2.検討手法

(1)対象まくらぎ

 図1に対象としたラダーマクラギの概要を示します。ラダーマクラギとは、レールに沿ってプレストレストコンクリート製の長尺な梁を配置し、それらを鋼製の継材で繋いだはしご状の縦まくらぎです。線路方向の長さは3150mm、縦梁は幅460mm、高さ165mmの断面でφ4.22mmの3本鋼より線が18本配置されています。また、ラダーマクラギの端部には軌間保持のための継材D51が配置されており、防錆のために幅230mm、高さ156mmの断面でD13の補強筋による鉄筋コンクリートで被覆されています。コンクリートの設計基準強度は、PCまくらぎと同等の50N/mm2です。

  • 図1 ラダーマクラギの概要
    図1 ラダーマクラギの概要

(2)測定手法

 図2に測定概況を示します。列車通過時のラダーマクラギの動的鉛直変位(以下,鉛直変位)は、サンプリングモアレ法に基づく微小変位測定システム2)を用いて測定しました。サンプリングモアレ法の詳細な説明は省略しますが、図2に示すような格子模様が描かれたターゲットを、カメラで時々刻々撮影して得られた画像を解析することにより、ある時刻tΔtだけ前の時刻あるいは後の時刻の状態との相対変位を得るものです。本手法は比較的短い露光時間でサブピクセル処理による高精度な変位測定が可能であるとともに、測定前にターゲットの設置が必要ですが、非接触で対象物の動的変位を効率的に測定可能な手法です。本手法の妥当性は既往の研究で実証済みです例えば2)。今回の測定では2台のカメラで4つのターゲット(格子ピッチ10mm)を撮影しました。使用したカメラは200万画素で最高170fpsでの撮影が可能なCMOSモノクロカメラで、軌道中心から3m 程度離れた位置に設置しました。カメラとPCの接続は、高速撮影時に大量のデータを遅延なくPCに転送可能とするためにUSB3.0規格のケーブルを使用し、ターゲットはエポキシ樹脂系接着剤を用いてまくらぎに直接設置しました。なお、図3のようにラダーマクラギが敷設された線区と同じ車両がほぼ同程度の速度で走行するPCまくらぎのレール継目部においても、測定を実施しました。

  • 図2 ラダーマクラギの測定概況
    図2 ラダーマクラギの測定概況
  • 図3 PC まくらぎの測定状況
    図3 PC まくらぎの測定状況

3.検討結果

(1)列車通過時の鉛直変位の時刻歴波形

 図4に列車通過時のラダーマクラギおよびPCまくらぎの鉛直変位の時刻歴波形の例を示します。同図のように、PCまくらぎの最大鉛直変位が5.7mm程度(ターゲット1)であるのに対し、ラダーマクラギの最大鉛直変位は最大で3.2mm程度(ターゲット1)であり、ラダーマクラギによってレール継目部の変位が2.5mm(44%減少)程度抑制されていることがわかります。

  • 図4 列車通過時の鉛直変位の時刻歴波形
    図4 列車通過時の鉛直変位の時刻歴波形

(2)鉛直変位の最大値

 表1に列車通過時のラダーマクラギおよびPCまくらぎの鉛直変位の最大値を示します。黄色でハッチングした試番は図4で時刻歴波形を示した試番です。同表のように、ラダーマクラギの鉛直変位の最大値は3.5mm程度、PCまくらぎの鉛直変位の最大値は5.8mm程度であり、ラダーマクラギにより動的な鉛直変位が40%程度抑制されていることがわかります。

 なお、それぞれの試番で鉛直変位に差が生じる要因としては、列車速度や車種の違いによる影響に加えて、乗車率の違いも影響しているものと考えられます。また、同じ試番でもターゲット毎に鉛直変位に差が生じていますが、ターゲットの設置誤差(角度、方向)をはじめとする種々の要因が考えられます。これらの検証は今後の課題としたいと考えています。

  • 表1 列車通過時の鉛直変位の最大値
    表1 列車通過時の鉛直変位の最大値

4.まとめ

 今回測定したレール継目部においては、ラダーマクラギはPCまくらぎの鉛直変位と比較して40%程度の鉛直変位抑制効果が実証されました。今後は当該区間の検測データ等も併せて整理し、保守省力化効果の定量化に関する検討を深度化させる予定です。なお、本測定においては京王電鉄(株)殿に多大なるご協力をいただきました。この場を借りて改めて御礼申し上げます。また、本報告で使用した図表は第72回土木学会年次学術講演会概要集(VI-472)より転載しております。

参考文献

1)森山正彦:バラスト・ラダーマクラギを用いた継目落ち対策、日本鉄道施設協会誌、Vol.47、No.9、pp.738-740、2009、

2)箕浦慎太郎、徳永宗正、渡辺勉、上半文昭、サンプリングモアレ法に基づくコンクリート構造物のひび割れ検知手法、第72回土木学会年次講演会、2016

(記事:鉄道力学研究部 構造力学研究室  渡辺 勉)