1.急曲線部・低速走行時の車輪乗り上がりメカニズムの研究

 乗り上がり開始から脱線に至るまでのメカニズムを明らかにするため、車輪とレール間の動摩擦係数の実態把握、所内試験線での走行試験(図1)、車輪とレール間のクリープ力試験を行っています。
 所内走行試験では、カントの付いた急曲線部で乾燥状態において低速走行時の乗り上がり脱線を実際に発生させ、乗り上がり開始から脱線に至るまでの車輪上昇量やアタック角等の輪軸の挙動と、車輪とレール間クリープ力、輪軸に働く外力やモーメントの変化を測定しました。乗り上がりは、軌道の5m平面性狂いが20mm以上の箇所で発生しました。また、乗り上がり脱線に至った試番のデータを従来の評価指標で整理すると、内軌側横圧輪重比、外軌側脱線係数、外軌側輪重減少率の3つの指標がともに大きな値をとるときでした(図2)。
 クリープ力試験では、在来線基本踏面輪軸を用いて、乗り上がり開始状態での車輪とレール間クリープ力特性を調査しました。低速でのフランジ塗油なし・乾燥状態における左右方向の等価摩擦係数(小さいほど乗り上がりが発生しにくい)を調べたところ、反乗り上がり側(踏面接触側)では最大0.5程度ですが、乗り上がり側(フランジ接触側)では半径160m相当のアタック角以下のとき、反乗り上がり側より小さい値を示す傾向にあるものの、全般的にばらつきが大きいことが分かりました(図3)。
 なお、本研究は国土交通省補助金を受けて実施しました。

図1 所内試験線での実車走行試験

図2 所内走行試験結果(半径160m出口緩和曲線部)

図3 クリープ力試験結果(乾燥状態,静止輪重30kN)



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