5.オーバラップ箇所のトロリ線摩耗低減対策

 新幹線のオーバラップは、架線を機械的、電気的に区分するための装置で、約1.5km毎に設置されています(図1)。オーバラップ箇所におけるパンタグラフ移行区間のトロリ線は、他の区間と比較して摩耗し易いため、トロリ線張替の原因になるなど、保守上の弱点箇所になっています。
 従来、この摩耗はパンタグラフがオーバラップを通過する時に発生する過大な接触力が原因とされ、トロリ線高さ構成の改善等が効果を上げましたが、摩耗の進行を完全に抑制することはできませんでした。
 そこで、新たな観点から摩耗原因を検討した結果、オーバラップのトロリ線摩耗率は、トロリ線に対して直角方向の偏位と相関があり、特に一般区間の標準ジグザグ偏位量である150mmを超えると大きくなること(図2)、その原因はすり板とトロリ線の間欠的なしゅう動(約1.5km毎)に起因している可能性が高いことがわかりました。
 対策として、オーバラップ箇所の偏位がほぼ150mm以内となるように調整した結果、トロリ線摩耗率は一般区間と同程度まで低減しました(図3)。
 この対策は、エアセクションを除くオーバラップ箇所(全体の約8割)に適用できます。

図1 オーバラップ箇所の構造

図2 オーバラップ箇所のトロリ線摩耗率と偏位

図3 偏位調整前後の摩耗率



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