7.亜鉛めっきを施した鋼製構造物の延命化技術

 溶融亜鉛めっき鋼は、50年以上の耐食性が期待できるメンテナンスフリー材料のひとつと考えられてきましたが、現実には経年20年程度で鋼の腐食に至る構造物が散見されています(図1)。そこで、溶融亜鉛めっき鋼製の電車線路鋼構造支持物を対象に、少なくとも60年間維持するための延命化対策の要否判定法と塗装による延命化法を開発しました。
 部材、部位間での腐食速度の違いや腐食進行に伴うさび成分の変化などの特徴を利用して、構造物架設後の経過年数と各部位のさび発生状況の観察から延命化対策が必要か否かを、現場の管理者が判定できる基準を定めました(表1)。
 また、腐食した溶融亜鉛めっき鋼の延命化法として、塗料による方法を検討しました。まず、塗料の選定を行い、次にその物性試験を行いました。その結果、めっき層の残存する面に塗布した塗膜の耐久性は、鋼腐食に至ってから塗布した場合より2倍以上高いこと、塗膜の劣化速度が低い塗料ほど構造物の耐久性の向上効果が大きいことがわかりました。さらに、塗膜の劣化速度が十分に遅いウレタン樹脂系塗料と環境遮断性の高いエポキシ樹脂系塗料を組み合わせた2回塗り仕上げの塗装法の効果が大きいことがわかりました。この方法では、溶融亜鉛めっき層が消耗して鋼の腐食が開始する前に塗装することで、補修後20年以上の塗膜の耐久性が期待できます。
 これらの技術は亜鉛めっきを施した鋼橋にも適用可能です。

表1 延命化対策の要否判定法
図1 溶融亜鉛めっき鋼の腐食事例(架設後約25年の電車線路鋼構造支持物)
備考1:構造物のさび発生状況と構造物の経過年数から延命化対策の要否を判定する。
備考2:「要」は対策が必要な場合を、「否」は対策せずとも60年間維持できる場合を、「要再調査」は腐食が軽微で現段階では将来予測ができず、数年後に再度調査を行う必要がある場合を示す。



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