浮上式鉄道の技術開発は、山梨実験線において一日に東京・大阪間の往復距離に匹敵する1,000kmを、安定した状態で走破できる段階まで到達しました。現在の課題は、超電導磁気浮上式鉄道実用技術評価委員会から求められた信頼性・耐久性能の検証、コスト低減のための技術開発、および車両の空力特性の改善です。2001年度はこの課題の解決に取り組み、山梨実験線の走行試験において検証してきました。
 なお、以下の技術開発は、国土交通省の補助金を受けて実施しました。

1.山梨実験線における技術開発
〔実験線走行試験の推移〕
 信頼性・耐久性能を検証する高速連続走行試験を主として年間169日の走行試験を実施し、年間走行距離は72,600km、走行開始からの累積走行距離は208,600kmに到達しました。また、最高速度が500km/h以上の走行は年間で700試番を越え、一日の走行距離として最長1,100kmを記録しました。実験線走行試験の推移を図1に示します。


図1 2001年度走行試験の推移

〔主な試験結果〕
(1)新しいき電方式の開発
 電力供給システムのコスト低減を目指して、き電系を従来の3系から2系に減らして簡素化した、新しいき電方式を開発しています。
 瞬時切替き電方式(図2)は、システム構成が簡素であり、コスト低減効果が大きい特徴があります。山梨実験線において本方式を模擬した走行試験を実施し、通電電流を変化させた場合の乗り心地について、評価を実施しました(図3)。その結果、通電電流(推力)に比例して乗り心地が低下するものの、必要推力の小さい等速・減速区間のような特定の条件下では、適用可能性があることを確認しました。
 また、電流開閉き電方式(図4)では、開閉器数が多くなるものの、セクション切替時に推力変動が発生しません。次年度以降に真空バルブの負荷開閉試験を実施して、開閉寿命を検証する予定です。


図2 瞬時切替き電方式の構成


図3 瞬時切替き電方式における通電電流と乗り心地レベルの関係


図4 電流開閉き電方式の構成

(2)分散型誘導集電システム現車試験
 浮上式鉄道では、非接触での車上電源確保が課題となっています。このため、各台車の超電導磁石(SCM)表面に組み込んだ集電コイルで集電する分散型誘導集電システムの開発を進め、誘導集電用SCMを片側に搭載した分散型誘導集電台車による現車試験を実施しました(図5)。その結果、PWMコンバータが正常に力率1の制御を行い、400km/h以上の速度で目標である25kW/片側台車の電力を安定的に集電できることを確認しました(図6)。
 また、この誘導集電システムの制御を工夫することで、地上−台車間に上下力を発生させ、乗り心地向上を図ることを目指した基礎試験も実施しました。


図5 分散型誘導集電台車編成組み込み


図6 誘導集電現車試験結果

(3)上下非対称コイルの開発
 従来の山梨実験線の浮上案内コイルは、8の字状に巻かれ、同一形状の上側コイルと下側コイルが対称に配置されています。その後の検討により、上側コイル高さを小さくして上下非対称とすることで、車両の磁気ばね特性が改善されて左右方向の走行安定性が向上し、これにより、従来コイル使用時よりも低い速度で浮上走行を開始することができることが、計算によって求められました。
 今年度は、上下非対称浮上案内コイルの電磁力を把握するために、計測用コイルを山梨実験線に仮設して特性の測定を行い(図7)、測定値が計算値と概ね一致することを確認しました。これより、上下非対称浮上案内コイルを導入することによって、浮上開始速度を50km/h程度下げられる見通しが得られました(図8)。


図7 上下非対称コイルの電磁力測定試験状況

(a)測定値と計算値の比較
(b)従来コイルと非対称コイルとの比較

*等価案内ばね定数比=等価案内ばね定数測定値または計算値/等価案内ばね定数必要最低値
図8 等価案内ばね特性



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