2.基礎技術開発
 2001年度は、超電導磁石の振動、トンネル内空力特性の解明などに重点を置いた研究開発を実施しました。

(1)高速時における超電導磁石の上下曲げ振動対策
 浮上式鉄道システムのコスト低減対策として、地上コイル数を減らすことが考えられます。
 浮上コイルの数を現状の 1/2 にした場合、現用の超電導磁石では上下方向の曲げ共振モードが発生し、熱負荷が増大するという問題点があります。また、この共振モードのうち、一次曲げ共振モードは外槽剛性の影響が大きく、二次曲げ共振モードは上下荷重支持材の剛性の影響が大きいことを、これまでに確認しています。
 今年度は、熱負荷増への影響が大きい、高速時における上下二次曲げードの対策として、剛性を強化した上下荷重支持材を試験用超電導磁石に取り付け、機械加振試験装置によって振動特性や熱侵入量等の性能確認試験を実施しました(図9)。これによって、定常の熱侵入量に大きな影響を与えることなく、その共振周波数を走行速度領域以上に引き上げ得る見通しを得ました。

(a) 各成分ばね定数の荷重支持材別の寄与度(b) 荷重支持材の熱侵入量

図9 荷重支持材のばね定数と定常熱侵入量

(2)500km/h対応トンネル内圧力変動シミュレーション
 列車がトンネル内を走行すると、トンネル内に圧力変動が発生します。この変動は列車速度のほぼ2乗に比例して大きくなる為に、高速走行では車体が受ける圧力変動を把握する必要があります。
 これまでに、新幹線について数多くのシミュレーションが実施され、走行試験結果と良く一致することが確認されていますが、500km/hで走行する山梨実験線車両を対象に従来の方法で計算したところ、走行試験結果との間にずれがありました。これは、この計算法が、列車速度が音速より十分小さい場合に適用できる簡略化をしたものであったために、音速の約0.4倍で走行する場合には、誤差が大きくなったものと考えられます。
 そこで、 500km/h走行車両に対する、トンネル内圧力変動を精度良く予測できるシミュレーション方法を開発しました。400km/h程度の計算結果は、模型実験結果のそれと良く一致しました(図10)。また山梨実験線の実測値との比較した誤差率については、従来計算では高速になる程に大きくなっていましたが、開発した計算方法では誤差率が減少するとともに、速度依存性も小さくなっています(図11)。


図10 模型実験とシミュレーション結果の比較


図11 山梨実験線の実測値とシミュレーション結果の比較



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