1.急曲線部低速走行時の乗り上がり脱線メカニズムの解明と安全性評価法

 実物輪軸を用いて乗り上がり開始状態での車輪/レール間のクリープ挙動を調べるとともに、構内脱線走行試験を行い、乗り上がり開始から脱線に至るまでの車輪/レール間作用力変化や輪軸の挙動を測定しました。その結果、以下のようなことが明らかになりました。
(1)外軌側車輪のフランジ接触部では、合クリープ力が飽和状態にあり、車輪が乗り上がるほど縦クリープ力が増加して、脱線に影響を及ぼす横クリープ力が相対的に減少します(図1)。これらのクリープ挙動に合うモデルを用いて車両走行シミュレーションを行った結果、乗り上がり脱線に至るまでの輪重、横圧、アタック角変化や車輪上昇量は、走行試験の実測値とよく一致しました(図2)。今後、このシミュレーションを活用すれば、各種の車両・軌道条件に対し、車輪の上昇量等を精度良く推定することが可能となります。
(2)構内脱線走行試験では、新たに開発した車上測定装置を用いて外軌側車輪が乗り上がる際の輪軸アタック角を測定し、車輪上昇量が約10mmまでは、車輪の上昇とともにアタック角が減少し、さらに上昇を続ける 場合はアタック角が増加に転じることを実データで確認しました(図3)。
(3)車輪の乗り上がり開始状態では、外軌側脱線係数、外軌側輪重減少率、内軌側横圧輪重比の三つの指標の間に一定の関係があり(図4)、内軌側横圧輪重比等に関係する車輪/レール間の動摩擦係数の値が大きくなると脱線に至ります。
(4)動摩擦係数について、営業線において実測データの収集を進めた結果、相対湿度が高く、単位時間当たりの通過軸数が少ない場合に動摩擦係数が小さい傾向にあることが分かりました(図5)。列車頻度の極めて低い線区では、動摩擦係数の値が小さいことを前提に安全性を評価することが適当と考えられます。
 今後、以上の成果を踏まえて精度の良い安全性評価手法と適切な目安値を提案する計画です。なお、本研究は国土交通省補助金を受けて実施しました。









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