9.速度センサを用いない簡単な空転・滑走検出方法

 最近のインバータ電車で用いられている空転・滑走再粘着制御では、速度センサからのパルスをもとに算出した車軸の回転速度および加速度を用いて、空転・滑走を判断し、電動機トルクの引き下げ指令値を決定しています。
 しかし、主電動機の速度センサ故障が度々生じ、主回路に関わるメンテナンスに問題を生じています。そのため、速度センサを用いないベクトル制御をすることで、信頼度の向上などが期待できます。そこで、速度センサ情報の代わりに主電動機電流の情報を用いる新しい空転・滑走検出方法を提案しました(図1)。
 通常、ベクトル制御では、インバータ出力電流が一定となるように制御しています。この状態では、ある一つの車軸が空転滑走を始めた場合、空転した車軸の主電動機電流は急激に減少し、一方空転していない車軸の主電動機電流は急激に増加します(図2)。そこで、各主電動機の電流差に着目することで、速度センサを用いた場合と同等な性能で空転滑走検出が可能となります(図3)。走行試験により本提案方式が有効に機能することを確認しており、新しい空転・滑走検出方式として使える見通しを得ました。
 なお、本研究は運輸施設整備事業団の「運輸分野における基礎的研究推進制度」により実施しました。




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