1.営業電車の回生ブレーキ動作状況の把握と改善

 営列車内LANおよび携帯電話を用いて、営業電車の回生ブレーキ動作状況や信頼度を遠隔測定できるシステムを開発しました(図1)。このシステムでは、回生ブレーキの性能を「信頼性」および「可動率」から評価することができます。
(1)信頼性(reliability)とは、原因別(機器故障によるもの、大滑走によるもの、離線によるもの)に計測した、回生ブレーキ失効事象(保護動作により電気ブレーキ力がゼロになった状態)発生間の平均故障間隔(時間)です。
(2)可動率(availability)とは、回生ブレーキの指令継続時間中の全回生ブレーキ力に対する、実際にブレーキが作用した時間中の全ブレーキ力の比率です。
 本システムをJRの近郊電車に搭載し(図2)、回生ブレーキ動作データを収集しました。約1年にわたるデータ取得の結果、以下のことが分かりました。
@ 機器故障、大滑走による回生失効は皆無でした。機器レベルでの回生ブレーキ信頼性は高いと言えます。
A 回生ブレーキの平均可動率は、80〜90%に分布しており、編成内の号車・軸部位による差異は見られませんでした。
B 回生ブレーキの可動率は、滑走により通常10%程度低下しますが、これに軽負荷が加わると(例:図3)40%を超えて低下するものもありました。滑走発生の影響より軽負荷事象の方が、回生ブレーキ有効利用への影響が大きいことが判明しました。
C 30分当りの平均消費電力量を、運用別(新快速/快速、曜日 平日/土休)、時間帯(通勤帯8:00〜8:30/データイム12:00〜12:30)で分類した結果、運用による差異が最も大きく最大30%の開きがありました。また、補機による消費電力量は主回路分(=力行分−回生分)に対して平均で10%程度、最大25%に達した例もありました(図4)。

 このように、機器レベルでの回生ブレーキ信頼度は高く、可動率は軽負荷による影響が大きいことが分かりました。可動率の向上は省エネにも直結します。
 信頼性および可動率は、回生ブレーキが効く区間、効かない区間等の判断基準としても使用できます。故障件数が多く信頼性が低い区間、あるいは可動率が低い区間など信頼度の低い区間を見極めて対策を施し、対策前後の数値比較を行うことで、対策効果の定量的把握が可能です。実際に、このシステムにより離線対策前後の故障件数変化を確認した例があります。
 このシステムは、既にJRの通勤電車に搭載使用されています。






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