5.乗り物酔いの発生実態と影響する振動特性

 鉄道は比較的酔いにくい乗り物とされていますが、振子式車両などにおける酔いが時に話題となります。しかしながら、その発生実態や影響する振動特性については十分にわかっていませんでした。そこで、営業運転中の全国各地の特急列車内で約4,000名の乗客を対象にしたアンケート調査を実施しました。様々な走行条件下でのデータを広く集めるために、8つの線区、14の車両形式(うち8形式が振子式車両)を対象に、計52本の列車で調査を実施し、同時にその車両の振動特性を計測しました。
 その結果、酔いを生じた乗客の割合は振子式車両の方が多く、平均して約1.3%(非振子車両は0.3%)であることを確認しました。次に、酔いに影響する振動特性を調べるために、特定の周波数の振動成分を選択的に抽出可能なフィルタ(バンドパスフィルタ)を多数試作して、低周波振動の周波数と乗客の酔い状況との関連を分析しました(図1)。その結果、前後、左右、上下振動の中で、左右振動の影響が最も強く、しかも0.25〜0.32Hz付近に相関のピークがあることを明らかにしました。つまり、酔いやすい列車にはこの範囲の振動成分が多く含まれています。これを利用して、図中の相関係数を各周波数ごとの重みづけ値とみなし、列車酔いの影響を評価するためのフィルタ(=周波数補正曲線)を開発しました(図2)。各列車の左右振動データをこのフィルタで補正して、一定時間に渡って累積値を求めることにより、どの程度の乗客が酔うかを予測することが可能になります。




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