JR会社の在来線線区に導入されている現行ATSシステムでは、停止信号機への接近時の警報に対する運転士の確認扱い後は、自動列車停止機能が解除され、その後の運転誤りに対しては防護できないという問題を抱えています（図1）。そこで、この問題を解決できる新しいATSシステムを考案しました。
　新しいATSシステムでは、現行地上子と同じ変周信号に加え、ディジタル信号を重畳送信できる新型地上子を用いることにより、停止信号機までの距離情報等を車上に伝送し、車上にて速度照査パターンを発生させます。さらに、信号現示が変化した時に迅速に車両へ伝達するために、レールを用いて信号現示等をディジタル情報として伝送する方式を付加し、新型地上子との組み合わせにより連続的に制御可能なシステムとしました（図2）。新しいATSシステムの基幹技術となる新型地上子およびレールを用いたディジタル情報伝送について、交流電化区間および直流電化区間において現地試験を実施し、実用上問題のない伝送品質が得られることを確認しました。
　また、新しいATSシステムへの取替にあたっては、現行ATS設備を可能な限り活用できるため、導入コストが削減されます。さらに、現行ATSシステムと互換性を有するので、現行ATSシステムを併用しながら、段階的に取替工事を実施できます。現在、仕様の詳細検討をJR７社と共同で行っており、実用化を目指しています。

図1　現行ATSシステムの問題点	図2　新しいATSシステム機能概要