2. 山梨実験線における技術開発
(1) 実験線走行試験の推移
 2004年度は、走行日数164日の間で約85,700kmを走行し、試乗者数は約21,700 名でした。1997年度の走行開始からの累積走行距離は43万4千kmに達し、複数台車で運用開始からの累積走行距離が、目標としていた20万kmを超えることができました。また、試乗者数は累積で約89,200名となりました。
 図2に1997年度からの年間走行距離および試験日数の推移を示します。1試験日あたりの平均走行距離は97年度で107kmでしたが、2000年度からは400kmを超え、2003年度と2004年度では平均で500km以上を走行しています。
 2004年度は救援連結走行を模擬した2編成の連結走行(図3)、またタイヤパンクや超電導磁石(SCM)の故障などを模擬した特殊試験を行って、異常時のシステムとしての対応性や着地輪などの補助機器の健全性を確認しました。
 また、ガイドウェイ狂いを設定して車両運動特性を把握する試験や、車両への落雷などの異常事態を模擬した特殊試験も行いました。
 さらに、1,000km以上の距離を10日間連続して走行してシステムの信頼性を実証するとともに、すれ違い時の相対速度を1,026kmまで引き上げて、車両運動を確認しました。図4にすれ違い時の走行パターンを示します。



(2) 台車制振機能を付加した零相誘導集電システムによる乗り心地改善
 車上電源確保のための誘導集電システムの開発を行ってきました(図5)。今回、新たに台車制振機能を強化した乗り心地改善が可能な零相制御方式を盛り込みました。本方式は集電用3相交流に零相電流(3相それぞれの電流の和電流で、各相電流を個別に制御することにより実現)を重畳して流すことで、大きなダンピング力を発生できるものです。山梨実験線での試験結果は次の通りです。
1)集電コイル形状の工夫により集電能力が改善され、速度300km/h以上で目標の25kWの電力が集電可能であることを確認しました(図6)。
2)ダンピング制御を行なうことにより、図7に示すように台車上下振動が低減し、上下乗り心地レベルについてもその向上が確認できました。

(3) 簡略地上コイル対応超電導磁石の特性確認試験
 建設コストを低減するために、山梨実験線の一部に導入している単層推進コイルや、国立研究所で技術開発を進めてきたPLG(推進・浮上・案内兼用)コイルなど、地上コイルを簡略化することが考えられています。しかしながら、地上コイルを簡略化すると走行中の超電導磁石(SCM)への電磁加振力が現状の地上コイル構成と比較して増加することから超電導磁石の振動が大きくなり、結果として液体ヘリウムの蒸発量が増大することが明らかになっています。そこで、地上コイルを簡略した場合にも対応可能なSCMの技術開発を進めました。
 定置試験や各種の解析によりその構成を明らかにし、その検討結果に基づいて山梨実験線で使用しているSCMに対して、耐振性能を向上させる改良を行いました。具体的には、SCMの外槽側面にアルミ板を追加するとともに、超電導コイルを支える上下荷重支持体を強化しました。
 山梨実験線の走行試験結果から、上記改良を行うことで図8に示すようにSCMの上下方向の二次曲げ共振周波数が走行速度領域外へシフトしていることがわかりました。また、液体ヘリウムの蒸発量も改良前と比較して減少しており、簡略地上コイルに対応できる超電導磁石の実現可能性が明らかとなりました。




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