線路下横断構造物の施工法は、軌道を工事桁で仮受し開削して函体を構築する開削工法、エレメントを嵌合挿入する非開削工法などの工法が実用化されています。しかし、現在の耐震計算法では構造物が完成した条件で照査を行うため、施工法の違いによる条件が考慮されておらず、実態に即した耐震性評価が実施されていないのが実状です。
そこで、開削工法および非開削工法を対象に施工法の特徴を考慮し、それぞれの施工法が周辺地盤に及ぼす影響を施工事例の調査結果に基づく数値解析および模型振動実験により評価しました。その結果、開削工法の場合には構造物の側方に掘削土留め工の先端から土の安息角程度の広がりの範囲で土の剛性が初期値の20%程度に低下し、非開削工法の場合はエレメント周囲(エレメント径と同程度の範囲)の土の剛性が10%以下まで低下することを明らかにしました(図1)。
また、地震時の作用外力は、工法間に差はなく、いずれも現行の設計基準で考慮している外力と同程度で、構造物の耐力には問題がないことを確認しました。しかし、開削工法の地震時の変形程度は、土の剛性低下の範囲が広いため、非開削工法より函体のせん断および回転変形とも20〜30%程度大きく、地盤と構造物の境界部での地盤沈下の範囲・程度が大きいことを把握しました(図1、図2)。
これらより、耐震対策としては周辺地盤の強化が効果的であることの目途を得るとともに、対策の範囲・程度について施工法に応じた設定方法を提示しました。
|