合金鋳鉄制輪子は車輪への攻撃性が低く高い粘着力が得られますが、高速域における摩擦力の向上が課題です。そこで、さらなる高速化に対応するため、高速域における安定した粘着力およびブレーキ力が得られる鋳鉄複合化制輪子を開発しました。
鋳鉄複合化制輪子とは、車輪と制輪子の摩擦面に炭化けい素粒子を介在させると摩擦係数が高まる効果を踏まえ、従来の合金鋳鉄制輪子に炭化けい素製フィルタを複合化したものです(図1)。合金鋳鉄と炭化けい素を一体化するにあたり、鋳造の際に溶湯の酸化物をろ過するために用いる炭化けい素製フィルタを転用したところ、炭化けい素粒子を分散させる方法や炭化けい素ブロックを埋込む方法に比べて製造が容易で強固に接合できました。
炭化けい素は合金鋳鉄に比べて非常に硬いため、車輪踏面の著大な摩耗や熱き裂の多発を引き起こさないよう、目の粗さ等を改良したフィルタを最適位置に配置することにより、摩擦面上の炭化けい素面積率を1%程度に抑えました。制輪子摩耗量は従来品と同程度ですが、車輪への攻撃性を抑えつつ、従来品に比べて高速域における摩擦係数を著しく向上できます(図2)。ブレーキ初速度約130km/hでは、制動距離が8割程度に短縮します。
開発品の製造工程は従来品の場合とほぼ同様であり、溶湯の流入前にフィルタおよびその位置を固定するための案内棒を鋳型に設置するという軽微な追加工程のみで量産が可能です。
開発品を4両中1両に取付けて行った現車試験では、車輪温度や制輪子摩耗量は従来品と同等で、従来品のみの編成に比べて制動距離を短縮する効果が確認されました。
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