列車ダイヤを検討する際には、どの区間の利用者が多いのか等、その路線の旅客流動を把握し、利便性が高いダイヤにする必要があります。そのため、ダイヤ改正を実施した場合の、列車・区間毎の乗車人数等の詳細な旅客流動を予測し、ダイヤを利用者の視点から定量的に評価する手法が望まれています。
そこで、自動改札機や大都市交通センサス等から得られるODデータ(出発駅、目的駅、利用時間帯を含む利用者データ)を利用し、あるダイヤを実施したときの、各利用者の利用列車、各列車の混雑度、旅客乗降による列車遅延を推定する、列車運行・旅客行動予測システムを開発しました。このシステムでは、利用者一人一人の出発駅から目的駅までの行動を、利用者の嗜好(早く行きたい、乗換や混雑を避けたいなど)を反映させながら推定することが可能です。また、列車遅延が列車混雑をもたらし、列車混雑が列車遅延をもたらす、増延と呼ばれる現象も再現できます。混雑度と遅延の推定結果のダイヤ図表示を図1に、配線図表示を図2に示します。
このシステムの利用により、個々の利用者の所要時間、乗換、混雑度等の体験をもとに不効用値(目的駅までの移動の不便度を表す指標)を求め、全利用者の不効用値の総和をダイヤ全体に対する評価値とする、利用者の視点によるダイヤ評価が可能です(図3)。また、ダイヤ改正案の評価に加え、ダイヤ乱れ時の運転整理案の評価などにも活用できます。
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