建物が密集している都市部では、既設の建物に近接して鉄道を敷設したり、既設の鉄道に近接して建物を建設する場合が多くあり、列車走行に伴って発生する地盤振動が建物内に伝搬したり、建物部材の振動により生じる騒音(固体音)が問題となることがあります。建物内での振動を精度よく予測するためには、地盤から建物基礎へ伝搬する振動の減衰効果を定量的に評価することが特に重要ですが、建物と地盤がお互いに与える複雑な動的相互作用を解析する必要があるため、これまではスパコンでも膨大な計算時間を要し簡便に予測することは困難でした。
そこで、都市部に多い杭基礎建物を対象に、杭基礎模型やシリコン模擬地盤模型を用いた振動実験などを行い、杭が地盤を拘束し杭周辺の地盤変位が平均化される入力損失現象や、地盤から建物へ入力した振動が杭を介して再び地盤へ伝わる逸散減衰現象等を定量的に解明して、地盤から建物に振動が伝搬するメカニズムを明らかにしました。
それらの結果から、地盤・杭と上部構造を分離した単純なモデルで動的相互作用が解析できることを明らかにして、PC上で行える簡易な振動予測手法として提案しました(図1)。さらに、トンネルや高架橋等に近接する建物を対象として実測値と予測値の比較を行い、提案した手法が実用上十分な精度であることを確認しました(図2)。
本手法は、鉄道の新設または大規模改良時の環境影響評価や、線路に近接して建設される建物の振動予測に活用できます。
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