1.HILSを用いた仮想編成走行試験環境の構築

 鉄道車両の開発には、試作と評価(走行試験)に膨大な労力とコストを要します。現在、営業線で実施されている走行試験を試験の自由度の高いベンチ試験に置き換えることや、台車を試作することなく性能を評価することができれば、開発効率と品質、信頼性の向上につながります。
 そこで、車両試験装置に車体間運動模擬装置を付加し、仮想的な隣接車両の運動を複数の計算式を協同させてリアルタイムに計算し、その動きを車体間運動模擬装置が模擬することによって、仮想編成走行を行う試験環境を構築しました(図1)。実物(供試車両)とシミュレーション(仮想車両)が連動するこのシステムをHILS(Hardware-In- the-Loop Simulation)といい、これにより車両間の相互作用を考慮した編成試験がベンチ試験で実施可能になります。また、台車各部のばね・ダンパ要素をアクチュエータに置き換えることによって、軸箱支持剛性や各種ダンパの減衰力などの特性をソフトウェアで自由に変更できる車両試験台専用の可変特性試験台車を開発しました(図2)。
 実際に模擬3両編成試験を実施して模擬編成走行試験環境が精度よく動作し、単車と編成走行の違いが確認できました(図3)。また、可変特性試験台車に装備したアクチュエータを制御することでダンパ等を模擬できることを確認し(図4)、設定パラメータを変更することで所要の車両運動特性が得られることを確認しました。