9.ピボット支承を有する旧式鋼構造物の耐震評価手法および補強方法

 都市内の旧式鋼構造物は、幹線道路との交差部の重要な箇所に多くあり、地震時の安全性を把握し、耐震性を高めることが重要です。しかし、構造が複雑で、また多様な形式の構造があるため、耐震評価や補強を行うことが困難なのが現状です。
 これらの構造物にはピボット支承(球面形状の突起とくぼみを組合せた鋼製の支承)が多く用いられており、大規模地震時に弱点となる可能性があります。そこで、ピボット支承について、実橋からの撤去品等を用いて載荷試験を行い、その結果をもとに、耐力や変形性能を評価する手法を提案しました。これを構造物の非線形骨組解析モデルに取り入れ、地震応答解析により構造物の耐震性能を評価する手法を開発しました。これにより、今まで困難であった大規模地震時の耐震評価が可能になりました。本評価手法は、補強効果の評価を含め、実橋の耐震評価にすでに適用されています。
 また、ピボット支承の耐震補強手法として、コンパクトで施工が容易な補強リングを考案しました(図1@)。載荷試験や解析により大規模地震時の照査値(応答値/限界値)が約4割低減することを確認しました(図2(a))。耐震性能をさらに向上させる補強手法として、桁を下横構ブレースで補強する工法(図1A)や柱間をブレース補強する工法(図1B)を開発し、大規模地震時の照査値が4〜9割低減することを確認しました(図2(b))。