10.切土のり面工の健全度評価手法

 切土のり面工背面の地山が風化により土砂化した場合、その風化層によってのり面工に徐々に負荷がかかり、やがてのり面工が不安定化することが懸念されます(図1)。そこで、のり面工背面の風化層を模擬した模型地盤を用いて土圧測定実験を行い、風化層の土圧特性を解明するとともに、切土のり面工の安定性を評価する方法を検討し、地山の風化を考慮した切土のり面工の健全度評価手法としてまとめました。
 土圧測定実験の結果、土砂化した風化層の土圧は、のり面工および健全な地山から受ける摩擦抵抗によって、一般的な土圧算定式で求められる値よりも小さくなることを明らかにしました(図2)。これらの実験結果を基に、風化層の厚さの影響を適正に考慮した土圧評価式を提案しました。また、この土圧評価式を様々な条件に適用して安定解析を行い、のり面の高さ、風化層の強度、勾配、風化厚さをパラメータとした切土のり面工の安定性評価ノモグラムを作成しました(図3)。
 このようなノモグラムを用いた安定性評価手法や効果的な調査方法などを示した「切土のり面工の健全度評価マニュアル」を作成し、現場への普及を図る予定です。