12.電柱制振器

 電車線を支持する電柱は地震時や列車通過時に振動し、特に、高架橋と電柱の固有振動数が一致する場合には共振により振動が大きくなり、電柱の損壊や電車線の断線、架線金具の損傷等が発生する恐れがあります。そこで、電柱の耐震性向上および架線の振動抑制を目的に、電柱に減衰機能を付加して共振による振動を抑制するための電柱制振器を開発しました。
 電柱制振器は、電柱下部に取り付けて電柱の曲げ変形を利用して制振するものです。電柱下部の変位は非常に小さいため、既存のオイルダンパなどでは制振効果が得られません。そこで微小変位でも制振効果を発揮する粘弾性体を鋼板で挟んだ積層構造の電柱制振器を開発しました(図1)。また、鉄道現場の施工性や保全性などを考慮した上で、理論検討および1/2縮尺モデルによる基礎試験を行い、適切な制振効果を得るための設計手法を提案しました。この電柱制振器は、土木構造物に手を加える必要がなく電柱単独で施工できること、施工時の細かい調整が不要であること、耐候性に優れていることが特長です。
 実物のコンクリート柱に電柱制振器を取り付けて振動台試験を行った結果、電柱制振器の制振効果により電柱先端の加速度が低減されることを確認しました(図2)。提案する設計手法により、所要性能に応じた設計が可能です。高架橋と電柱の固有振動数が一致する箇所への導入が特に効果的です。