13.雷害対策の評価シミュレーション

 電子機器を用いた信号設備の増加に伴い、雷による被害が数多く発生しており、効果的な雷害対策の確立が求められています。現在、雷害対策の効果検証を行うためには、比較的大規模な実験を行う必要があり、時間と経費がかかるとともに、実験箇所の接地抵抗値や大地抵抗率などが、結果に大きく影響するという問題があります。
 そこで、実験によらずに雷害対策を定量的に評価するため、信号設備の中でも雷害件数の多い踏切設備を対象に、落雷に伴い発生する雷サージ電圧や侵入する雷サージ電流が計算可能な雷サージ解析モデルを提案しました(図1)。雷サージ解析モデルは、鉄道固有の導体であるレール部分のモデルと、機器のモデルから構成されます。本手法が、実用上十分な精度であることを実験により検証しました(図2)。
 また、現在非接地である踏切制御子用保安器を接地した場合の雷害対策効果について、提案する雷サージ解析モデルを用いて評価しました。保安器を接地することで、同じ大きさの落雷に対して、発生する雷サージ電圧を現状の半分以下にすることができ、踏切制御子の耐雷性能を2倍に向上できます(図3)。これにより、雷害発生確率を現状の1/5に低減できると推定されます。
 この雷サージ解析モデルは、レール近傍に設置される信号設備に適用できます。