2.長大スラブ軌道トンネルにおける車内衝撃音の現象解明と低減対策

 長大スラブ軌道トンネル内を走行する新幹線列車が、対向列車のトンネル突入により形成されトンネル内を伝播する圧縮波と交差するとき、圧縮波の高周波成分が車内へ透過し、衝撃音が発生することがあります(図1)。そこで車内の衝撃音とトンネル内を伝播する圧縮波を同時に測定し、衝撃音の発生メカニズムと低減対策を検討しました。
 その結果、長大スラブ軌道トンネルでは圧縮波の波面の切り立ちが生じ、列車と急峻な波面の圧縮波が交差する時に車内の音圧に鋭いピークが生じ、衝撃音として聞こえることが明らかになりました。そして、車内の衝撃音の大きさと列車からみた圧縮波の波面の傾きの関係を調べ、圧縮波の波面の傾きがおよそ25 kPa/sを超えると車内で衝撃音が発生することが明らかになりました(図2)。
 トンネル内を伝播する圧縮波の波面の傾きは、入口緩衝工などの微気圧波低減対策により小さくできます。そこで測定を実施した列車とトンネルを対象に、数値シミュレーションによりトンネル坑口部に設置する開口部の効果を調べました(図3)。その結果、対向列車突入時の対策を適切に行うことで、トンネル内の全区間で列車からみた圧縮波の波面の傾きが25 kPa/s以下になり、車内衝撃音を発生させないようにできることがわかりました。