1.シミュレーションを用いた多孔質材貼付による空力音低減原理の解明

 パンタグラフのように機能上の制約から平滑化が困難な形状の表面に連続気泡の多孔質材(図1)を貼付することで、空力音を低減できること(風洞試験で1〜3dBの空力音低減効果)が、風洞試験を中心とした開発でわかってきました。しかし、空力音の低減原理が必ずしも明確でないため、適用部位や効率的な貼付方法などは風洞試験での試行錯誤を繰り返して決めざるを得ませんでした。
 そこで、多孔質材を貼付した場合の円柱周りの流れ場をモデル化したシミュレーションを行い、実験結果との比較から、このような流れ場が、物体正面での多孔質材への吸い込みと側面でのわき出しによって、変動の少ない安定した流れが形成され、これが多孔質材を貼付すると空力音が低減する原理であることが明らかになりました(図2、図3)。
 また、本モデルを用いた多孔質材の空隙率や厚みなどをパラメータとした流れ場のシミュレーションと、渦の変動を基に空力音を評価するシミュレーションを組み合わせることにより、多孔質材を使用する際の、より合理的、効率的な貼付部位、貼付方法を見出すことが可能になりました。