2.指差喚呼の効果を体感できる学習方法

 指差喚呼はヒューマンエラー防止に用いられていますが、作業時にエラーがめったに起こらないため効果を実感できず、形骸化しがちであると言われています。そこで、指差喚呼のヒューマンエラー防止効果を体感しながら学習する手法を開発しました。
 まず指差喚呼の5種類のヒューマンエラー防止効果を検証しました(表1)。検証実験では、各課題を指差や喚呼を行う条件と行わない条件で比較し、指差や喚呼を行った場合はエラー率が低くなることを確認しました。例えば、散らばった点を数える課題を何もせずに数えた場合のエラー率が35%程度だったのに対し、指を差しながら数えると20%程度に減少しました。このエラー率や減少効果は課題により異なります。
 検証実験で用いた課題を基に、各ヒューマンエラー防止効果を体感的に学習できるソフトウェアと体感学習法を開発しました(図1)。開発した学習法は、エラーの体感と考察により、指差喚呼のヒューマンエラー防止効果を自ら気づかせることを目的としています。このため、受講者に仕事場面でどんなエラーが発生するかを考えさせた後、課題を実施します。次に、その結果を示すことで指差喚呼の効果を体感させた後、再び指差喚呼とヒューマンエラーの関係を考えさせます。本手法を用いた研修の後、体感した指差喚呼の効果の認識が高まることをアンケート調査で確認しました(図2)。