8.リスク評価に基づく合理的な斜面防災対策の意思決定支援方法

 土砂崩壊や落石による斜面災害発生の危険性をリスクという単一の指標で評価する手法を構築しました。これにより、定量的かつ合理的に防災対策の優先順位や方法の意思決定を支援できるようになります。
 土砂崩壊に対しては、斜面条件などから求まる崩壊発生確率とその地域の降雨頻度期待値などにより被害の発生頻度期待値を算出し、これと災害発生時の様々な損失からリスクを算出します(図1)。落石に対しては、運動シミュレーションにより算出される岩塊の線路への到達確率と、その岩塊の落石としての健全度、災害発生時の損失からリスクを算出します。
 上記方法により算出した土砂崩壊や落石のリスクを比較することで、複数の線区に存在する斜面に対する防災対策実施の優先順位を定量的に決定できます(図2)。さらに、対象斜面の各種対策前後のリスクと対策にかかる費用を比較することで、リスク低減効果や費用対効果が算出できるため、合理的な防災対策方法を策定することができます(図3)。また、鉄道事業者が容易に利用できるように、この方法の具体的な算出・活用事例を示した利用ガイダンスを作成しました。