10.転換鎖錠装置の機械性能解析手法

 分岐器を転換し鎖錠する転換鎖錠装置は電気転てつ機と、信号リンク、エスケープクランク、スイッチアジャスタ等の転てつ付属品から構成されています(図1)。この転換鎖錠装置が機能するためには、トングレール等を転換させるときの負荷(転換負荷)に対して、電気転てつ機が適正な大きさの転換力を有することが必要です。転換負荷は、レールと床板の摩擦力だけではなく、使用する転換鎖錠装置や分岐器の構成部品などの影響も受けるため、現状では、実設備を製作して測定する以外に転換負荷を知る方法はありません。
 そこで、実測試験によらず転換負荷を推定するための、転換鎖錠装置の機械性能解析モデルを構築しました。このモデルでは、力の伝達と各部の運動を計算するために、転換鎖錠装置を構成する各部をばね、減衰器および接触・分離を伴う要素で表しました(図2)。新幹線用転換鎖錠装置を対象にこのモデルを用いて、転換動作のシミュレーションを実施し、設計に必要な平均転換負荷や転換動作開始点を十分な精度で推定できることを確認しました(図3)。本モデルを使用すると、あらかじめ転換負荷を推定できるため、これまで経験に頼っていた転換鎖錠装置の設計をより効率的に行える他、試作試験回数の削減が可能になります。なお、提案するモデルは、新幹線用や在来線用の普通分岐器用転換鎖錠装置に対応しています。