5.可搬型のレール波状摩耗モニタリング装置

 レール頭頂面に発生する波状摩耗(図1)は、沿線騒音や軌道部材劣化の原因となるため、定期的にモニタリングし、必要に応じてレール削正を行う必要があります。現在、波状摩耗のモニタリング手法として、目視検査または軸箱加速度データを用いる方法があります。しかし、目視検査には多大な労力が必要になります。また、軸箱加速度測定では、台車に加速度センサを取り付けるため車両床下での作業が必要となり、かつ測定スケジュールが車両運用に左右されます。
 これに対し、床下作業を必要とせず、車内で簡易に測定できる波状摩耗の可搬型モニタリング装置を開発しました(図2)。本装置は、センサ部を床上に設置し、特定周波数の車内騒音が目安値を超えると波状摩耗発生区間と判定し、その大きさを推定します。また、本装置では速度情報(GPS)、曲線情報(ジャイロ)およびレール継目情報(マイクロフォン)を用いてデータを距離軸上で表示できるため、波状摩耗発生区間が特定できます。
 試作機を用いた在来線での現車試験の結果、波状摩耗に起因する周波数成分のみを抽出することにより、軸箱加速度測定とほぼ同程度の精度で、車内騒音から波状摩耗発生区間を検出できることがわかりました(図3)。また、車内騒音のレベル値と波状摩耗の波高には高い相関が見られました。これらの結果から、本装置は波状摩耗のモニタリング装置として必要な性能を有していることが確認できました。なお、車内騒音を測定するため、動力車よりも付随車での測定を推奨します。