1.通勤列車衝突時の乗客挙動シミュレーション

 列車が踏切で自動車と衝突する場合などの車内のサバイバルファクター(乗客被害を左右する要因)を明らかにするため、ロングシートの通勤列車を対象に衝突時の乗客挙動を再現するシミュレーション手法を開発しました。打ち出し式の衝撃試験機を用いた人体部分模型(頭部、臀部等)と内装品(そで仕切り、窓、荷棚等)との衝突試験(図1)により、乗客の体が内装品と衝突した場合の挙動(接触特性)を明らかにし、シミュレーションの精度を向上させました。開発したシミュレーション手法は、衝突時の衝撃加速度に対して同時に多数の乗客の挙動が解析できます。
 上記手法を用いて列車衝突時のシミュレーションを行い、サバイバルファクターの観点から車体設計における安全性向上のための留意点と対策例を示しました。乗客同士のぶつかり合いによる傷害が多いこと、および衝突時の乗客の移動距離が大きいと傷害が生じやすくなることから、衝突時の乗客の移動を制限する対策が有効です。具体的には、ロングシート座面を手すり等で仕切ることにより、着座乗客の傷害を低減できます(図2)。また、ロングシート脇の袖仕切りを板型とし、その上端高さを1150mm程度、上端幅を300mm程度にすることにより、袖仕切り脇の着座乗客とその反対側の立位乗客の傷害を低減することができます。さらに荷棚高さを低く設定する場合、立っている乗客の頭部がぶつからないようにするために荷棚長さを短くすることが有効です。