4.流速分布の測定による空力音源の実験的評価手法

 空力音に対する従来の音源探査手法は、音源位置の解析はできるものの、音の発生機構に関する知見が得にくいという課題がありました。そこで、空気の流れの速度分布を直接的に測定して騒音の発生箇所と観測点における騒音レベルを評価することで、流れから音が発生する機構を解析できる実験的評価手法を開発しました。
 流速分布の測定には、レーザーを用いた非接触でかつ高い時間分解能が特長の粒子画像流速計測法(PIV)を適用しました(図1)。流れから発生する空力音の予測に適した評価式を採用すると同時に、流速分布の測定精度を向上させることで、基礎検討として用いた2次元円柱に対し、1.5kHz程度までの周波数で詳細に空力音源の特性を把握することができるようになりました。さらに本手法による予測音圧が実測した音圧と良く合うことを確認しました(図2)。また、レーザー光の偏光特性を利用して、異なる二断面の速度分布が同時に得られる、物体周りの3次元的な流速分布測定手法を開発しました。パンタグラフ模型の舟体部分に対して本手法を適用した結果、舟体の長手方向に広がる音源の構造や空力音源の分布を求めることができました(図3)。
 本手法により、流速分布の測定から複雑形状の音源分布が実験的にわかるようになり、流れと音を密接に関連づけた詳細な解析が可能となりました。今後は、本手法を低騒音対策の設計指針の検討に役立てます。