7.小型超電導マグネット

 材料分析器等に利用できる超電導マグネットは市販されていますが、金属系超電導線材で作られているため、液体ヘリウム温度(-269℃)までの冷却が必要となり、非常に大型な装置となります。そこで、溶融凝固法で製作したガドリニウム(Gd)系高温超電導材を円筒形状にしたバルク材を使用して、材料分析器以外にも幅広い磁場発生分野で活用できる小型で可搬式の超電導マグネットを開発しました。
 高温超電導バルク材は液体窒素温度(-196℃)で非常に高い電流密度を有します。磁場解析により最適構造を検討し、高温超電導バルク材は外径80mm、内径50mmのリング状としました。これを樹脂含浸による補強を施し、それらを積層させて小型超電導マグネットを製作して性能評価を行い、10個積層した場合に中心で2.59Tの磁場が発生することを確認しました(図1)。この磁場を従来の技術で実現するには、銅コイルでは直径約1m、市販の超電導マグネットでは直径約500mmの装置が必要になります。磁気を帯びていない磁石へ磁気を帯びさせる着磁機能を評価するため、開発した小型超電導マグネットと市販の超電導マグネットのそれぞれで、直径30mmの供試材への着磁を行った結果、ほぼ同じ磁場分布特性が得られ、市販の超電導マグネットと同様の高精度の着磁が可能なことを確認しました(図2)。