1.運転士の異常時対応能力向上プログラムの実用システム

 異常時の心理的な不安や緊張、あるいは対処後の気のゆるみ等から発生しやすいヒューマンエラーを防ぐため、運転士が異常時の状況を運転訓練シミュレータ上で体験し、適切な対応ができる能力を培う教育プログラムを開発してきました。これを異常時対応能力向上プログラムと呼んでいますが、これまで概念設計レベルであったものを、教官が指導する時に効果的なインターフェースを備え、かつ、運転士の自主学習も可能とした実用システムとして実現しました(図1)。
 このシステムは、運転訓練シミュレータに簡単に追加できる7つのサブシステムから構成されています。プレイバックサブシステムは指導する際に使いやすく、自主学習もできるように運転操作データ、心拍データなどの客観データと画像が連動し、直感的に運転士の状態を理解しやすいインターフェースになっています(図2)。また、操作データに基づいて自動的にエラーを判定する機能や運転操作を診断する機能を装備することで、運転士が客観的に行動や心理状態を振り返り、自身の傾向を的確に理解できるようになっています。さらに、これまでの運転シナリオについても、複数の異常時の状況を組み合せたシナリオを作成・追加することで、目的とした異常時の心理状態を体験しやすいものに改良しました。なお、本システムの試用とアンケート調査に協力して頂いた運転経験者から、本システムが運転訓練に有効であると評価されました。