6.主鋼線の破断に伴うPC桁の損傷箇所の予測手法と部分補強工法

 プレストレストコンクリート(PC)桁は、内部に配置した鋼線を緊張してコンクリートにプレストレス(圧縮力)を加えて強化した構造であり、比較的長スパンの橋りょうに多数用いられています。近年、この鋼線を保護するグラウト(セメントミルク)の充填不良が散見され、腐食による鋼線の破断や、それに伴う桁の耐力低下が懸念されています。
 そこで、要素・部材実験を基に鋼線の付着応力(τ)とすべり量(s)の関係を表す力学モデルを提案し、部分的にグラウトが充填されていない箇所の鋼線が破断した場合に、残存するプレストレス力を解析的に推定する手法を開発しました。本手法を従来の設計手法に組み込むことで、PC桁の損傷箇所や残存耐力を予測することができ、効率的に補強計画を策定することができます(図1)。
 また、予測した損傷箇所付近に、削孔深さを浅くできる拡底式アンカーを用いて部分的に鋼板を接着する補強工法を開発しました。本工法は、従来から行われてきた鋼線を新たに追加する外ケーブル補強に比べると、工事が容易になること、ケーブル緊張時の桁の反り上がりに伴う軌道への影響が無いこと、狭隘な桁下空間で簡易に補強できること、アンカーの施工時に健全な鋼材を損傷させないことなどの利点があります。本工法は、模型や実物大のPC桁を用いた実験により、所定の補強効果が得られることを確認しました(図2)。