8.排水パイプを打設した盛土の耐降雨性評価手法

 排水パイプは盛土の耐降雨性向上対策として多くの施工実績があるものの、これまで、その効果を評価する手法は確立されていませんでした。そこで、排水パイプの効果を定量的に再現するための浸透流解析モデルを作成し、これを用いた解析により排水パイプを打設した盛土の耐降雨性能を評価する解析手法を提案しました。
 排水パイプは、地盤内の水位を低下させる機能のほかに間隙水圧を低下させる機能を有しているといわれてきましたが、これらの機能の効果は定量的に評価されていませんでした。そこで、小型の円筒型模型地盤でその効果を確認し、これを再現する解析モデル(図1)を作成して、その妥当性を実物大模型盛土(図2)で検証しました。それら解析や検証の結果、打設した排水パイプの周囲には透水性の低い層(スキンエフェクト層)が形成されていることを明らかにし、このスキンエフェクト層の厚さとその透水性(盛土の透水係数に対するスキンエフェクト層の透水係数の比)との関係を明らかにしました(図3)。この関係から、任意に決めたスキンエフェクト層の厚さに応じて解析モデルの透水性を決定することができます。このようにして作成した解析モデルにより求めた間隙水圧分布を用いてのり面の安定性を計算することで、排水パイプを打設した盛土の耐降雨性を適正に評価できます(図4)。
 また、このような評価方法を用いることで、盛土の耐降雨性を向上させるための排水パイプの打設本数や間隔などの施工仕様を適切に設計することが可能となります。