9.バラスト軌道の座屈・大変形解析手法

 軌道の構造や敷設条件など様々な条件を考慮して常時の温度変化に対する軌道の変形や座屈安定性を定量的に評価することは、ロングレールを管理する上で重要です。また近年、地震時の脱線・逸脱防止対策の検討が進められており、これらの対策が講じられるバラスト軌道自体の変形挙動を定量的に評価する必要性も高まっています。そこで、常時の温度変化や地震時の振動等の影響を定量的に評価できる、バラスト軌道の座屈・大変形解析手法を開発しました。
 本手法(図1)では、様々な形式の構造物や軌道構造を3次元FEMによりモデル化します。レールやまくらぎは節点を設けて分割してその間を梁材要素で結び、道床抵抗力や締結装置は非線形のばね要素として取り扱います。常時の座屈挙動解析では、レール軸力を微小なステップで徐々に増加させながら、各ステップごとに最も変形した節点に着目して座屈挙動を計算します。残る節点の変位はこの着目節点に比例させて、軌道全体の変形形状を求めます。地震時の動的大変形解析では、道床抵抗力特性に横方向への加振や構造物境界での食い違いの影響等を考慮して、軌道の変形挙動を求めます。
 本手法により、バラスト軌道の座屈や大変形時の挙動を推定できることを、実物大軌道による座屈実験結果や加振実験結果等により確認しました(図2)。