3.鉄道競合地域における定量的な駅勢圏設定手法

 駅勢圏とは、駅を中心にその駅を利用すると期待される利用者が存在する範囲を言いますが、いくつかの路線や駅が近接し,各駅の駅勢圏が重なり合う場合には駅勢圏を明確に設定することができませんでした。そこで、駅周囲に拡がる町丁目毎に、近隣競合駅との利用者の取り合いをモデル式により、確率値である吸引率で算出する、定量的に駅勢圏を設定する手法を開発しました(図1)。
 モデル式は、停車本数やターミナル駅までの乗車時間等の要素で構成される駅の魅力度をあらわす値Sに比例し、各町丁目の中心位置から駅までの時間距離Dの2〜3乗に反比例する形で表されます。したがって、快速停車駅への格上げ等、駅のサービス向上効果を各町丁目の吸引率が増加する程度によって把握できます。
 町丁目の人口や就業者数等のデータと、算出した町丁目毎の吸引率を需要予測モデルに適用することで、従来手法では精度が低かった、人口急増地区の駅乗降人数の予測も、簡易にかつ細密に求めることができます。また、駅勢圏内の高齢者率等の居住者特性も把握でき(図2)、駅施設改良やサービス施策に向けた、駅のマーケティングリサーチに活用できます。