4.早期地震防災システムのP波検知性能の向上

 P波が緩やかに立ち上がる地震波に対してP波検知性能を向上させるため、新幹線の早期地震防災システムで利用するP波検知用パラメータの最適値を求めました。
 現行の早期地震防災システムは、振幅の長時間平均(ノイズレベル)と短時間レベル(振幅レベル)を比較する方法でP波の検知を行っています(図1)。通常、P波検知の性能を向上させると地震波以外のノイズを誤って検知するケースが増加します。そこで対ノイズ性能が低下しないよう、はじめに関連するパラメータを対象に感度解析を行い、ノイズによる誤検知を抑えつつ、緩やかに立ち上がる地震波の検知率を向上させるパラメータを抽出しました。抽出されたパラメータは、ノイズレベルと振幅レベルの平滑化の度合いを定義する係数(図1のαnとαu)です。
 次に、東北地方太平洋沖地震を含む地震波12051波形、ノイズ波32018波形を用いて上記パラメータの最適値を求め、これらを使用することにより、東北地方太平洋沖地震に対する震央距離250km以内におけるP波検知率が26%から44%に向上することを確認しました。またP波によるマグニチュード推定の間隔を短くし、状況によっては、より早いタイミングで警報を出力できるようになりました。