7.非破壊によるコンクリート構造物表層の緻密さの簡易評価手法

 鉄筋コンクリート構造物を長く使い続けるためには、劣化の原因となる水や塩分などが内部へ侵入しないよう、施工されたコンクリートが十分に緻密である必要があります。しかし、実構造物のコンクリートの緻密さを現場で評価する簡単な方法がないため、造られたコンクリートの品質検査や品質管理は、強度試験の結果や材料の配合に基づいて行われています。ところが、過去の事例からは、強度や配合に問題のないコンクリートを使った構造物であっても、緻密さが不足する場合には早期に鉄筋腐食などの不具合が生じることが懸念され、実構造物で緻密さを確認できる非破壊試験手法の開発が強く望まれていました。
 そこで、電源設備などが不要でかつ1名で測定ができる、簡易な非破壊試験手法を考案しました。試験には、少量の水を噴霧するスプレーと、表面色の変化を計測する電池駆動の測定器を使います(図1)。緻密さに優れたコンクリートではすぐに水を吸い込まなくなり、少量の散水を繰り返した際には早い段階で表層の水分が飽和します。本手法で測定する表面色の変化速度などから表層水分飽和度を求め、この値と繰返し回数との関係を調べることでコンクリートの緻密さの簡易な判定ができることが実験で明らかになりました(図2)。本手法は、測定が簡便で作業性に優れ、現場への適用も容易です。数多くの測定個所を一次的にスクリーニングする簡易評価手法として活用でき、構造物に施工されるコンクリートの品質向上に役立つことが期待されます。