3.軌道検測データを活用した盛土内部状態評価法

 盛土と構造物の境界部では、雨水の浸透等により盛土内部に緩み域が生じることがあります。このため、橋台前面から盛土内部への削孔調査を行い、変状が認められた際には補修が行われますが、調査に多くの費用や時間を要します。そこで、軌道検測データや軸箱(上下)加速度データを活用した盛土内部状態評価法を提案しました。
 境界部の盛土内部の変状により大きな軌道沈下が発生した区間の軸箱加速度データを分析した結果、補修前後において波長1〜5m付近のパワースペクトル密度に差異が認められました。つまり、盛土内部に変状が生じるとレール方向の軌道上下支持状態が局所的に大きく変動するため、この波長の軌道形状に差が現れると考えられます。
 以上のことから各種データを比較したところ、盛土内部に変状がある箇所では5m弦高低変位と軸箱加速度に大きな応答が確認されました。よって、これらの指標を用いた盛土内部状態評価法を提案しました。特に、5m弦高低変位については、盛土内部に変状がある箇所では、その標準偏差や最大値の進み量が大きかったことから、5m弦高低変位の進み量に着目することで、各箇所における盛土内部の変状の有無を精度よく選択できます(図1)。また、この5m弦高低変位進み量の時間的な推移を把握することで、変状の生じた時期を推測できる可能性が高いことも確認しました(図2)。