4.実績データを用いた輸送障害時の旅客流動分析

 輸送障害時の運転整理においては、運転再開前後の各区間における利用者数を推定し、それに応じた輸送力を確保する運転整理を実施することが重要です。そこで、実際の列車運行に伴い記録・蓄積される各列車・区間の乗車率データ、実績運行時刻データを利用し、輸送障害時の旅客流動を分析・予測する手法を開発しました。
 まず、輸送障害発生日を対象に、これらのデータを実績ダイヤ図上に可視化する手法を開発しました(図1)。これにより、ダイヤ乱れの無い標準日と乗車率が異なる列車・区間が容易に把握でき、当日の運転整理結果に対する分析が可能です。
 次に、輸送障害の発生箇所、時間帯、不通時間の長さ等の概況または見込みから、運転再開前後の上下線・各区間の断面通過人数を予測する手法を開発しました(図2)。これにより、運転再開前後の各時間帯に、どの程度の輸送力を設定するのが適切なのか、事前に検討することが可能です。
 この予測手法を通勤線区の複数の輸送障害事例に適用し、予測値を実績値と比較した結果、予測誤差は概ね十数パーセント以内で、運転整理案を検討するうえで実用的な精度であることを確認しました(図3)。