3.アルミニウム合金のナノ組織制御による特性改善

 新幹線電車構体のさらなる軽量化のために、現行の熱処理型アルミニウム合金の性能向上が求められています。アルミニウム合金の特性は、金属組織の結晶粒や析出物のサイズに強く依存します。これまでの研究で行われてきた結晶粒を粒径ミクロン(10-6m)オーダにする制御では、強度は増加しますが耐食性等の低下がみられます。そのため、高強度化とともに耐食性や加工性等も改善できる材料処理手法を開発することが課題でした。そこで、実際の車両構体で使われているアルミニウム合金の析出物を分析し、その析出物を粒径ナノ(10-9m)オーダに制御する方法として、圧延加工と熱処理を組み合わせた、加工熱処理手法を提案しました。
 Al-Mg-Si合金(6N01合金)では座屈防止のための高強度化が求められます。提案した手法を適用することにより、弾性変形の上限強度(0.2%耐力)は、溶体化と時効処理で作製される一般材に対して1.5倍以上にまで向上することを確認しました(図1)。また、7000系合金では高強度化とともに耐食性が求められます。Al-Zn-Mg合金(7075合金)に対しても、強度とともに耐食性も向上することを確認しました(図2)。
 提案するナノ組織制御手法で高強度部材を作製することにより、部材の薄肉化を図るとともに耐食性を確保するための塗装重量の軽減が見込まれ、車両構造の軽量化が期待されます。