4. 崩壊防止ネットと地山補強材による石積み壁の耐震補強工法

 土留め擁壁は全国で約 20 万カ所に及び、石積み壁はその 4 割超を占めているため、大規模地震に対応した石積み壁の耐震補強工法の開発が急務となっています。そこで、崩壊防止ネットと地山補強材を併用した石積み壁の耐震補強工法を開発しました。
 石積み壁は壁面に一体性がないため、大地震時に一部の積み石で抜け出しが生じた場合、それが全体的な崩壊につながります。これまでは、地山補強材で補強を行う場合でも、鉄筋コンクリート壁体を増し打ちして一体性を確保するか、地山補強材を高密度に打設する必要があり、補強工事が大規模となる点が課題でした。そこで、積み石の前面に抜け出しを防止するネットを敷設した上で、地山補強材を打設し背面地盤を安定化させ、耐震性の向上を図る対策工法を開発しました(図1)。
 振動台実験で補強効果を確認した結果、無対策では振動台加速度が 300gal で壁面および背面地盤に著しい変状が生じ、400gal で崩壊した石積み壁が、対策後は約 800gal 加振後でも軽微な変状にとどまっており、L2 地震動相当の大規模地震動に対しても、ネットの敷設により積み石の抜け出しを防止しながら、地山補強材で効果的に石積み壁の耐震性を向上できることを確認しました(図2)。また、実験結果の分析を通して補強メカニズムを明らかにすると共に、実務設計が可能なように設計マニュアルを整備しました