5.地震動が作用した盛土の耐降雨性低減メカニズムの解明

 現在、大規模地震が発生した後には、地震動により土構造物の安定性が低下している危険性を考慮し、降雨時の運転規制値を一時的に低く設定する措置がとられています。この規制値の低減量には経験的に決めた値が適用されてきました。そこで、地震後の運転規制値をより適正に設定するために、地震動が作用した盛土の耐降雨性の低減メカニズムを把握し、地震動による変状の大きさと耐降雨性の関係を定量的に明らかにしました。
 模型盛土(図1)に地震を想定した振動を加え、のり肩部に 3 パターンの異なる鉛直変位を発生させました。その後、それぞれに散水試験を行ったところ、地震動によるのり肩の鉛直変位が大きいほど、少ない散水量でのり面に新たな変状(クラックやはらみ出し)が発生しました(図2)。この原因を明らかにするため、散水中の模型盛土内の間隙水圧を詳細に分析した結果、加振後に生じたクラックに隣接した位置で局所的に間隙水圧が高くなり(図3)、模型盛土が不安定になることがわかりました。これにより、地震によって発生したクラックからの雨水の流入が盛土の不安定化に大きな影響を及ぼすことが明らかになりました。また、このメカニズムを踏まえて、模型盛土実験の水位上昇を再現する浸透流解析モデルを構築し、実盛土の耐降雨性を定量的に評価できるようになりました。