8.電車線設備の設計・評価に用いるトンネル内風速の提案

 列車がトンネル内を走行すると、電車線付近に空気の流れが生じてパンタグラフの揚力や電車線の挙動に影響を与え、高速走行時ほどその影響が顕著になります(図1)。 速度向上時等の電車線設備の余裕度もしくは改良の程度を明らかにするためには、トンネル内で考慮すべき風速をより正確に予測する必要があります。
 そこで、新幹線のトンネル内において列車通過時の電車線付近の風向・風速と、線条と金具類の変位、応力等を測定するとともに、得られた風速の測定結果からトンネル内を走行するパンタグラフ揚力を推定し、架線・パンタグラフ系の運動シミュレーションにより高速走行時の集電性能を評価しました。
 トンネル内の風速は線路平行方向が大きく、特に同じトンネル内に対向列車がある場合に増加します(図2)。これらを速度や車両形式が異なる様々な列車について測定し、トンネル内における電車線の設計や集電性能の予測時に考慮すべき最大風速を列車速度との比で整理しました(表1)。また、対向列車がある場合等のパンタグラフ揚力が増加する条件では,金具類の変位や応力が増大しやすいことを実測やシミュレーションにより確認しました。提案した風速を用いることにより、速度向上時等の集電性能を、より正確に予測できます。