1.超電導き電ケーブルによる電車走行

 直流電気鉄道では、変電所から車両に電気を送るき電線(銅線)が電気抵抗を有するため、回生失効や電圧降下が発生することがあります。これに対し、電気抵抗がゼロとなる超電導材をき電線へ適用することで送電損失が低減され、回生失効や電圧降下等が抑制される他、変電所間を超電導ケーブルで結ぶことで変電所の負荷平準化や集約化が可能となります。
 今回開発した超電導き電ケーブルシステムは、実路線でも適用可能な定格電圧 1.5kV、定格電流 5kA の性能を有します(図1)。システム小型化や熱侵入の低減を目的として、見かけ上 1本で冷媒の循環を行う「対向流循環方式」を採用しました。 これにより導体と冷却機構を一体型とすることができ、コンパクトなシステムとなっています(図2)。
 鉄道総研内試験線に敷設した超電導き電ケーブルシステム(31m)は、通電試験、耐電圧試験、冷却試験などを経て、世界で初めて超電導き電ケーブルを用いた電力供給方式として電車の走行試験に成功しました。