2.既設軌道スラブ用の水平変位拘束装置

 スラブ軌道で最も普及している A 形スラブ軌道は、突起コンクリート(以下「突起」という。)によって軌道スラブの水平変位を拘束していますが、伸縮継目周辺や橋梁目地部等では、レールや橋桁の伸縮に伴って過大な水平荷重が作用し、突起やその周囲のてん充材が損傷することがあります。また、一部区間では塩害による鉄筋の腐食が発生しています。このような損傷・劣化によって突起の耐力低下が確認された場合、既存の突起を撤去して再構築する必要がありますが、突起は軌間内に位置しているため保守間合いの短い営業線では施工が困難です。
 そこで、取り付けが容易で突起と同等の性能を有する既設軌道スラブ用の水平変位拘束装置(図1)を開発し、線区によって異なる様々な軌道スラブの敷設状況(路盤・構造物形態、てん充層厚さ等)に対応した、施工法を提案しました。
 本装置の水平抵抗力および水平変位拘束性能を確認するために載荷試験を行い、本装置は突起の設計荷重以上の水平抵抗力および十分な水平変位拘束性能を有していることを確認しました(図2)。また、新幹線の営業線において試験施工を実施した結果、夜間の間合いで本装置の施工が完了し、翌朝から供用可能であることを確認しました(図3)。
 今後、本装置を突起損傷箇所の補修対策として営業線スラブ軌道の補修マニュアルに追加すると共に、地震対策としての適用についても検討を進める予定です。