5.段落しを有する鉄筋コンクリート橋脚の耐震補強工法

 東北地方太平洋沖地震などの巨大地震では、鉄筋コンクリート(RC)橋脚の軸方向鉄筋の途中定着部(段落し部)が損傷する事例が多くみられています(図1)。段落し部の破壊は設計時には想定していないため、耐震性能を向上して破壊を防止する必要があります。そこで、帯状の鋼板(帯板)を PC 鋼棒によって RC 橋脚の段落し部に圧着する簡便な補強工法を開発しました(図2)。従来の RC 巻立てによる段落し部の補強に比べて、補強による橋脚の重量増加が少ないため、基礎の負担を少なくすることができます。また、橋脚断面の増加がほとんどないので、橋脚幅の総計が川幅に対して占める割合(河積阻害率)を補強前とほぼ同等とできるなどの特徴があります。
 本工法については、大型試験体を用いた載荷試験等により、施工が容易であることや、補強効果として耐力および変形性能が大きく向上することを確認しました(図3)。さらに、段落し部を損傷させた RC 橋脚に対して本工法を適用した場合についても、耐震性能が大幅に向上することを確認しました。
 これまでにラーメン高架橋柱の耐震補強が順次実施されており、今後は RC 橋脚の補強も求められています。本工法により、効果的で経済的な RC 橋脚の耐震補強が可能となります。