4.輸送障害時の影響拡大防止のための折返し設備の定量的評価手法

 近年、輸送障害時における影響範囲の拡大を防止し、輸送品質を向上させるため に、途中駅の上下線間にわたり線を新設して臨時の折返し運転を行う施策を検討され るケースがあります。折返し設備の新設は相応の投資を伴うため、新設の是非の判断 や新設駅の選定にあたっては、旅客の視点から客観的かつ定量的に評価することが望 ましいのですが、適切な評価のためには多岐にわたる要因を考慮する必要があるため、 これまで実施に至らないケースがほとんどでした。
 そこで、輸送障害の発生頻度や折返し運転の準備時間を考慮したうえで、折返し設 備の有無それぞれの場合について、運転整理ダイヤを自動で作成し、全旅客の列車乗 継経路を推定したうえ、その利便性の変化を輸送サービス改善度として定量的に算出 することにより、折返し設備の効果を評価する手法を開発しました(図1)。本手法は、 輸送障害に直面した旅客の行動として、当該路線の運転再開を待って目的地に向かう 行動に加え、他社線へ迂回して目的地へ向かう行動をあわせて推定でき、他社線の利 用可否による利便性の違いも考慮できるという特徴があります。
 開発した手法を実在する大都市通勤線区に適用し、折返し設備の 2 つの新設案に対 して、その優劣を定量的に判別できることを確認しました(図2)。