6.ノンフロン空調を実現する磁気ヒートポンプシステム

 磁気ヒートポンプ技術とは、フロンや代替フロンなどの気体を圧縮・膨張させる従来の冷凍とは異なり、磁性体に磁界を作用させたときの吸発熱現象(磁気熱量効果) を利用した冷凍技術です。フロン・代替フロン類は 2020 年に全廃予定となっており、 自然冷媒の利用や新冷凍技術の研究が急速に進められています。中でも磁気冷凍は、気体冷凍よりもサイクル効率が高く省エネ効果がある他、フロンや代替フロンを用いないため環境にやさしく、圧縮機を用いないため静かで振動も少ないという特徴があり、将来の空調機器や冷蔵庫への利用が期待されています。
 kW 級の冷凍能力を有する磁気ヒートポンプシステムの試作は、海外でもまだ数例あるのみであり、国内においては未開発でした。今回 kW 級の冷凍能力を実証するため、 鉄道総研で開発した円環状ハルバッハ配列永久磁石を組み込み、磁性体としてガドリニウム合金を搭載した磁気ヒートポンプを開発しました(図1)。室温における冷凍能力試験では、当初の目標 (1kW) を超える 1.4kW を達成しました(図2)。開発した磁気ヒートポンプシステムは、これまでの磁石配列による磁気冷凍機に比べ、磁性体単位質量あたりの冷凍能力が大きく、装置のコンパクト化に有利です (図3)。今回の成果により、磁気熱量効果を用いた磁気ヒートポンプ技術の、大型冷凍・冷房装置への適用可能性を示しました。今後は、さらに冷凍性能と効率の向上を図り、小型化・軽量化を進めることで鉄道車両空調への応用を目指します。