29. 集電系材料の通電摩耗形態マップ

  • 集電系材料の通電摩耗に関して、被膜抵抗を考慮した電気接点モデルによって、溶融ブリッジの発生メカニズムを解明し、通電摩耗形態マップを作成しました。
  • 通電摩耗形態マップは、摩耗形態の予測と今後の材料開発に活用できます。

これまで、電気鉄道の集電系材料であるトロリー線とすり板の電気的著大摩耗は、離線時のアーク放電によって発生すると考えられていました。しかし、最近の研究により、アーク放電に至る前の材料溶融によるトロリー線—すり板間の橋絡「溶融ブリッジ」が著大摩耗の主要因であることがわかってきました。

そこで、通電による発熱で溶融ブリッジが発生するメカニズムを明らかにするため、接触表面に酸化膜などの被膜抵抗を考慮した電気接点モデルを構築し、温度分布解析を行いました(図1)。その結果、硬銅トロリー線と鉄系焼結合金すり板の組合せでは、トロリー線表面の被膜抵抗における発熱でトロリー線温度が上昇し、融点の違いからトロリー線に溶融ブリッジが発生する「トロリー線溶融摩耗形態」となることがわかりました。トロリー線表面に被膜抵抗がなければ、通電下でもトロリー線が溶融せず、すり板のみが溶融する「すり板溶融摩耗形態」となることもわかりました。

温度分布解析結果より、トロリー線およびすり板の溶融を支配する因子を①接触電圧、②材料融点、③被膜抵抗を含む接触抵抗に特定し、通電時の摩耗形態発生条件を定量的に示すマップ「通電摩耗形態マップ」を構築しました(図2)。他の材料組合せにおいても、摩耗試験結果と通電摩耗形態マップが整合することを確認しました。

通電摩耗形態マップを用いることにより、集電系材料の組合せに対する摩耗形態の予測が可能になり、今後の材料開発に活用できます。

図1 電気接点モデルと温度分布解析結果
図2 通電摩耗形態マップの例
(硬銅トロリー線—鉄系焼結合金すり板)
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