19. 920MHz帯無線センサーネットワークの適用可能性

IoT の普及にあわせ、様々な周波数帯を利用した無線センサーネットワーク技術が設備の監視に導入されています。しかし、鉄道のように監視範囲が線状で、保守が難しい場所にある構造物や走行する車両などにも広く適用できる標準的なネットワーク技術はまだ整備されていません。

そこで、電力計やガスメーターの自動計量データの収集用に国内で開発され、2012年に国際標準となった無線センサーネットワーク技術であるWi-SUN(Wireless Smart Utility Network)に着目し、鉄道設備の状態監視に導入した場合の伝送性能を実験により評価しました。Wi-SUN規格は、小容量データに適した伝送手順で送受信するため、消費電力が数十mW程度と他の規格よりも少ないことが大きな特徴です。また、この規格が利用する920MHz帯は、他の規格で利用されている2.45GHz帯よりも遠い場所と通信でき、干渉が少ないという特性があります。鉄道総研の試験線沿線と試験車両、大型降雨試験装置、雪害防止実験所に評価用のネットワークを仮設してデータを収集する実験(図1)を行った結果、構造物や車両などの様々な使用環境と気象条件の想定のもとで、ネットワーク内でのデータの平均到達率が95%以上であることを確認しました(図2)。この結果から、Wi-SUN規格が鉄道設備の状態監視に広く利用でき、将来の鉄道向けの標準的なネットワーク技術として有効であることを示しました。